日本医療法人協会ニュース 2022年8月号
■巻頭言
日本医療法人協会 常務理事 小田原良治
■特別報告
2022年参議院議員選挙
医療現場・国民との対話を重視し次の6年間も引き続き尽力
■特集企画
医師の働き方改革最新の動向
解説 医療機関の宿日直許可申請に関するFAQ
■EVENT Report 令和4年度第1回経営講座
●第37回全国医療法人経営セミナーin兵庫
●ウクライナ支援について
●独立行政法人福祉医療機構貸付利率表
●編集後記
日本医療法人協会 常務理事
医療法人尚愛会 理事長
小田原 良治コロナ禍も第7波に入ってしまった。7月時点では、2類感染症から5類感染症への移行の検討も始まるようである。新型コロナウイルス感染症の後遺症も取り沙汰されているが、われわれ医療界には、新型コロナウイルスまん延の後遺症とも、副作用ともいうべきものが存在している。新型コロナを口実に種々の検討会が開催されず、あるいはWEB開催という名目的な会議で、議論が尽くされないまま施策が進行していることだ。
行政当局の一部には、むしろこれを好機ととらえる人々もいるであろうが、私たちにとってはコロナ合併症・後逍症であり、あるいは副作用であろう。医療法人の事業報告書の届出•閲覧のデジタル化もその一例だ。遅ればせながら検討が始まったようなので、適切な結論を期待したい。
医療事故調査制度創設時、日本医療法人協会 は「医療の内」と「医療の外」を切り分けることを提案し、長年の懸案を解決した。医療法人の事業報告書の届出•閲覧のデジタル化間題も、「デジタル化」の問題と「行政への報告」とを切り分けて検討するのも一案ではないだろうか。行政施策において蛮勇は評価されるべきものではない。慎重な議論と関係者のコンセンサスが必要であろう。
一方、医療事故調査制度による医療事故報告件数は、年間300~400件で推移しており、2021年の報告件数は317件であった。本年6月の医療事故報告件数は17件、院内調査結果報告件数は11件であり、相談件数は123件(医療機関51件、遺族等68件)であったようである。医療事故調査制度は適切な報告数を維持し、順調に 推移しているというべきであろう。
医療機関には医療事故調査制度が理解されてきている。しかし、いまだに旧弊から抜け出せないでいる医療関係者もいるようである。某大学のホームページには、「医療事故」の定義を「リスクマネージメントマニュアル作成指針」によるとして、医療法上の「医療事故」は通常の用語と 概念を異にしているという記載がある。
日本の法体系は、日本国憲法の下に医療法があり、その次に医療法施行規則、さらにその下に通知がある。また通知は、国の行政機関の、下部の行政機関に対しての指導である。国立病院宛の一通知である「リスクマネージメントマニュアル作成指針」が医療法に優先するかのごとき感を与え、「医療法上の『医療事故』を『通常の用語と概念を異にしている』」と公言しているのは、 教育機関としていかがなものであろう。
念のために付記しておくが、「リスクマネージ メントマニュアル作成指針」はすでに失効しているのである(15年7月6日厚労省確認)。教育機関である大学病院も、法体系を無視するような蛮勇を売り物にしてはならない。
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