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日本医療法人協会ニュース 2023年7月号

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巻頭言
  日本医療法人協会 副会長 菅間 博


特別報告 令和5年度定時総会
 高齢社会の本番を迎え地域密着の民間病院が大きな役割を果たすべき


■トピックス 骨太の方針2023
 骨太の方針2023が閣議決定 医療現場の実情を国の方針へ届け続ける
 日本医療法人協会 会長 加納 繁照

■特別インタビュー
 従来型の高度急性期~慢性期の枠組みにとらわれない実情に沿った「構想」が必要 
 日本医療法人協会 副会長/医療法人恵仁会なぎ辻病院 理事長・院長 小森直之

■自見はなこ参議院議員の国政レポート 第31回
 骨太の方針2023が閣議決定 少子化対策・こども政策の行方は

● NEWS DIGEST 医療界の最新動向
●ウクライナ支援について
●独立行政法人福祉医療機構貸付利率表
●編集後記


巻頭言
 日本の看護人材の行方は

日本医療法人協会 副会長 
社会医療法人博愛会 理事長
菅間 博

 ヨーロッパ諸国を後ろ盾とするウクライナの反転攻勢が本格化しているが、最終的に、クリミア奪還につながるか否かはわからない。クリミアをめぐるロシアとヨーロッパ諸国の争いは、1853年のクリミア戦争から繰り返されている。

クリミア戦争にかかわった人物として、イギリス人のフローレンス・ナイチンゲールが挙げられる。「戦場の天使」のイメージがあるが、彼女は負傷兵の主な死因が感染症であることを客観的に明らかにし、野戦病院の衛生環境の改善、感染予防により死亡率を低下させた。帰国後は看護学校を創設し、感染予防が看護ケアの基本であることを教え、看護教育の母と言われた。

コロナ禍の病院でも、感染予防は看護師が担う基本的な役割である。新型コロナウイルス感染症の発生初期に集団感染が発生したダイヤモンド・プリンセス号に、自衛隊の看護チームが派遣された。看護官のほとんどは准看護師であったが、感染予防の任務を完遂している。

当院の看護師が、コロナ禍中に8カ月にわたる「感染管理認定看護師」の専門研修を受けた。日本看護協会が設定する認定看護師の基準は高いのではと感じた。しかし、特定看準はさらに高く、全領域の特定看護師は全国で5000人ほどしかいない。

現在、看護師確保法に基づく「看護師等の確保を促進するための措置に関する基本指針」が、約30年ぶりに改訂されようとしている。この30年間で看護職員数は83万人から174万人に倍増した。日本の看護職員数は人口1000人当たり約12人で、米国とほぼ同じだ。OECD加盟国中で上位3分の1に入り、決して少なくはない。だが、臨床現場では看護師不足が叫ばれている。

主因は、看護師需給の不均衡や過剰な完全看護体制(診療報酬上の7:1入院基本料1)等と考える。今後、高齢化の進行とは逆に、現役世代は減少する。現役の看護師養成数が増えることは望めない。これまで、看護師等の確保政策の方針は日看協主導で決定されてきた。結果として、看護教育の高度化(准看護師の削減、4年生大学化)、看護師の処遇改善、看護師の資質向上、専門化(認定・特定看護師、大学院化)、ナースバンクによる就業斡旋──などが進められてきた。その結果が、現状の看護師需給の不均衡と考えられる。

高齢社会の医療には介護の視点が求められる。 患者の大部分を高齢者が占める病院では、高度な知識と技術を備えた専門看護師よりも、おむつ交換等の介護を担える人材が必要となる。今後の30年を見通して、国の看護師確保の基本指針がどちらに向くのか。ナイチンゲールのように客観的に現状を把握し、状況改善につなげられるのか注視する必要がある。


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