日本医療法人協会ニュース 2023年11月号
■巻頭言
日本医療法人協会 副会長 小森直之
■特別対談インタビュー 佐々木昌弘・感染症対策部長を迎えて
国全体での横断的な調整機能で 平時からの円滑な備えに 資する体制整備へ
■TOPICS 中央社会保険医療協議会
重症度、医療・看護必要度は 改定による現場への影響を加味した議論が行われるべき
日本医療法人協会 副会長 太田圭洋
■EVENT Report
2023年度病院経営定期調査中間報告
■EVENT Report
令和5年度第2回経営講座
● NEWS DIGEST医療界の最新動向
●秋の叙勲・褒章について
●ウクライナ支援について
●独立行政法人福祉医療機構貸付利率表
●編集後記
日本医療法人協会 副会長
医療法人社団恵仁会理事長
小森 直之国勢調査によると、日本の将来推計人口は2025年に向けて、高齢者、特に後期高齢者の人口が急速に増加すると予想されています。その後、 増加は緩やかになりますが、一方で、生産年齢人口(15~64歳)は25年以降減少が加速します。いわゆる現役世代の労働人口の減少により、今までのような生産労働力の確保は難しくなります。これは決して少し先の未来の話ではなく、人手不足問題は現在もすでに始まっており、さらに深刻化すると見られます。
この問題は医療界にも大きな影響を与えています。原因は少子化と働き方改革です。今日までは高齢化する労働人口の増加で何とか補ってきましたが、ここにきて、高齢者の労働人口の減少と生産年齢人口の25年以降の減少が重なり、社会的に大きな問題となりつつあります。そしてここに働き方改革が同時進行しています。
働き方改革の実現に向けた業務改善の猶予期間は終了し、24年4月1日から、建設業、運送業、病院等、砂糖製造業といった適用猶予業種等に対し時間外労働の上限規制が適用され、より一層労働時間が制限されます。産休・育休、有休消化、残業制限、それらが重なりすべての労働時間が短縮されています。 われわれ医療・介護分野は、機械で置き換えられない、労働集約型業種です。DXを活用してタスクシフトしたとしても、人手不足をカバーしきれないことは明白ですし、現場では今後、大変な問題となるのは必然です。
人手不足を補うために外国人労働者を雇い入れていますが、それでは到底補いきれないでしょう。現在、医療分野においてはEPAをはじめ、外国人労働者を受け入れる法的な枠組みがありますが、それ以外に、本来は、わが国で培われた技能や技術、知識を開発途上地域等へ移転することを主眼に置いた技能実習制度を用いて「人手不足」を解消するケースが見られます。 他産業において問題のある運用があったことで、制度そのものの見直しが行われましたが、安易に労働力として外国人に頼ることを戒める教訓としてとらえることも必要でしょう。
労働人口が少ないということは、医療行為を行う総時間も減少するということですが、一方で、高齢者の増加で医療のニーズは増していきます。 この問題に対応しなければ、医療現場は崩壊してしまいます。解決には「基準緩和」が求められます。病棟での看護配置については診療報酬改定のたびに話題になりますが、状況はなかなか変わりません。実態を踏まえつつ、根本的な見直しが求められています。
わが国の医療の持続可能性を高めるためにも、その働きかけを医療界から進めていかなければなりません。
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