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日本医療法人協会ニュース 2024年5月号

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■巻頭言
 日本医療法人協会常務理事 伊藤 雅史


■特別インタビュー
国立健康危機管理研究機構創設
 めざすべき将来ビジョンは世界の感染症対策を牽引する感染症総合サイエンスセンター
   厚生労働省 健康・生活衛生局感染症対策部長 佐々木昌弘、
 国立健庫危機管理研究機構の創設に阿けて(概要)
  ~感染症に不安を抱くことのない社会の実現~

■インタビュー
マイナ保険証の利用促進に向けて質の高い医療のさらなる実現に向けた
大きな変革となる 「マイナ保険証」の導入・活用を推進いただきたい
  厚生労働省保険局保険課長 山下 護
 Report「マイナ保険証利用促進集中取扱月間」と利用促進のためのツール・一時金のご案内セミナー

■特別寄稿
「サポート詐欺」の現状と対策
 近年急増中のネット「サポート詐欺」情報漏えいの危険性にも配慮した対応を
  警視庁サイバーセキュリティ対策本部

●「第1回経営講座」開催のお知らせ
●医療界の最新動向NEWSDIGEST
●春の叙勲・褒章について
●独立行政法人福祉医療機構貸付利率表
●編集後記
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 >広告:日本医療事業協同組合


巻頭言
 医療情報システムのセキュリティ対策について

日本医療法人協会 常務理事
社会医療法人社団慈生会 理事長
伊藤 雅史

  私が経営する慈生会では2012年より医療系、 情報系ともにクラウドサーバーで一元管理するシ ンクライアントシステムとし、端末にはデータが残らない等のセキュリティ対策を採用していたが、昨秋開設の等潤メディカルプラザヘのシステム導入に並行して、法人全体の通信機器、グループウェア、セキュリティソフトの更新と通信では広域イーサの高速化などを採用し、等潤病院、プラザ、老健イルアカーサ、訪問診療、訪問看護、 介護、健診のすべての施設、事業所を一元的に網羅する体制を再構簗した。

 さらなる対策としてウイルスソフトを入れ替え、法人全体の電子カルテシステムの更新を検討している最中に「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版」が示され、新たな対応を迫られることになった。内容は、良くいえば教科書としては最適で、必要な対応策は網羅されているが、「はじめにセキュリティ対策ありき」の色合いが濃く、実際のシステムにどう組み入れるについてはほとんど顧みられていない。実際、かかわっていたベンダーの担当者たちとも「どこまで対応すべきか」と頭を抱えることになった。

 サーバーがウイルス感染してしまった場合の復旧作業がその一例だ。汚染されたサーバーを停止し、除染したうえでバックアップデータを移行する。端末も優先順位の高い順に予備機を投入し汚染された端末は除染して再インストールしていくという過程が必要になる。

 この作業期間を短くしようとすればするほど、費用は高くなる。当会ではサーバーは3時間、遅くとも1日以内に復旧し、限定した端末で医療を継続し、システム全体は3日以内、遅くとも1週間で完全復旧することをめざしたため、サイバーテロ対策費用は電子カルテ更新費用の6割にもなってしまった。どこかで折り合いをつける必要があるが、それにはモデルケースを提示したり相談窓口を設けるといった対応が不可欠である。ぜひ、検討していただきたいと思う。

 また、補助金も単一システムをより安価に導入するケースを想定したものがほとんどで、こうした複数システムの同時運用を想定したものにはなっておらず、今後の課題だろう。既存システムの更新、新規導入を問わず、電子カルテ、通信、セキュリティ、サイバーテロ対策などを講じるには法人単独では困難で、多くのメーカーやベンダーと協議する必要があり、1年半以上をかけて検討を重ねてきた。しかし、たとえば東京都の場合、現在の補助金は募集開始から運用まで実質 的に10カ月程度しかないうえ、相見積もりを要求される。時間をかけて検討してくれたベンダーが報われない可能性も出てくる。

 ガイドラインは重要だが、実装も踏まえなければ文字どおり''絵に描いた餅''になりかねない。


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