日本医療法人協会ニュース 2026年10月号

■巻頭言
日本医療法人協会 副会長/埼玉県支部長
医療法人聖仁会/医療法人光仁会 理事長
埼玉県地域医療構想アドバイザー
西村 直久
■令和9年度税制改正要望
課税化を最終目標に据えつつ病院を支える早急な税制措置を要望
日本医療法人協会 会長 伊藤 伸一
■介護・在宅部会が提言
介護報酬改定へ現場の課題を提示
高齢者医療・介護一体化を見据える
医療法人博仁会 理事長
日本医療法人協会 常務理事/介護・在宅部会長
鈴木 邦彦
■第41回全国医療法人経営セミナー開催のご案内
■2026年度第2回経営講座のこ案内
■ニュースダイジェスト
●独立行政法人福祉医療機構貸付利率表
●編集後記
日本医療法人協会 副会長/埼玉県支部長
医療法人聖仁会/医療法人光仁会 理事長
埼玉県地域医療構想アドバイザー
西村 直久各地で新たな地域医療構想が進んでおりますが、ここでは埼玉県における地域医療構想について考察してみます。埼玉県は人口約730万人を擁し、都市部、郊外、山間部が共存しています。 そのため、地域によって人口構成や医療需要が大きく異なります。こうした多様性を象徴する地域として、さいたま圏域、群馬県との県境に位置する北部圏域、山間部の秩父圏域を見ていくと、新たな地域医療構想を実装するうえで、地域ごとの課題や方向性が見えてきます。
まず、さいたま圏域です。人口136万人のさいたま市では、急性期拠点機能を人口20万人 当たり1カ所と考えると、6~7カ所程度が想定されており、この数は医療提供体制の実情と齟齬がないものと考えています。仮に人口30万人当たり1カ所となると、約4~5カ所となり、その選定は難航することが予想されます。このように、都市部など、医療の需要と供給のバランスが取れている地域においては、急激な医療提供体制の変化は望ましくありません。アクセスや地理的特性、診療実績や政策医療の観点なども踏まえ、地域事情に応じて議論されるべきです。
次に、北部圏域です。ここでは、県境を越える医療が大きな課題になります。地理的、交通上の事情から群馬県側への患者流出が日常化しており、特に藤岡圏域の急性期入院患者の約3割を北部圏域の患者が占めています。人口減少や高齢化が進み、将来的に医療需要の減少が見込まれる藤岡地域にとっても、北部圏域からの患者は一定の医療需要を支える存在となっています。医療は日常生活の延長線上にあるため、こうした県境を越えた受療行動は自然な流れであり、必ずしも行政区域内で医療を完結させることにこだわる必要はないと考えます。
そして、人口約9万人の秩父圏域ですが、2040年にはさらに人口減少が進み、7万人を下 回ると予想されています。地域医療構想の区域設定の目安とされる人口20万~30万人を大きく下回ることから、区域の広域化も議論されます。しかし、秩父は広大な山岳地域であり、単純に区域を広げれば、居住地域によっては、かえって医療へのアクセスが悪化する可能性があります。高齢者救急・地域急性期機能や在宅医療等連携機能については地域の医療機関が担い、高度・専門医療については近接区域の急性期拠点病院等との連携により対応していくことが考えられます。つまり、「区域の広域化」ではなく、「機能の広域化」によって必要な医療を確保していくことが、秩父圏域においては現実的ではないかと考えます。
このように、同じ埼玉県内であっても、さいたま、北部、秩父では、人口規模、面積、人 口密度、さらには患者の受療行動や医療資源の状況も大きく異なります。一律の形を当てはめるのではなく、それぞれの地域特性に応じた地域医療構想を考えていく必要があります。埼玉県におけるこうした取り組みや課題が、それぞれの地域で新たな地域医療構想を考える際の一つの参考になれば幸いです。
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